破産法の否認権には、
どのようなものがあるの?
破産法の否認権には、
詐害行為の否認、
偏頗行為の否認、
無償行為の否認、
相当対価処分の場合の否認があります。
詐害行為の否認について
基本的には、
破産者の詐害意思の立証により否認できます。
■破産者が破産債権者を害することわかっていて行った行為
この場合は、時期に関係なく否認できます。
一般的には、
危機の兆候があった日以降になると思われます。
しかしながら、この行為によって利益を受けた人が、
破産債権者を害する事実を知らなかった場合には否認はできません。
■破産者が支払いの停止や
破産手続開始の申立てがあった後に行った、
破産債権者を害する行為
この場合は、破産者が行った債務の消滅行為で、
債権者の受けた給付が、
消滅した債権の額に比べて過大な場合に、
その過大な部分だけを否認することができます。
ただし、この場合も、
この行為によって利益を受けた人が、
次のようなときには否認することはできないのですよね。
@支払いの停止があったことを知らなかったとき
A破産手続開始の申立てがあったことを知らなかったとき
B破産債権者を害する事実を知らなかったとき
※詐害行為
・ここでは、債務者の財産を安く売却したり、
多額の債務を負担したりして、
債務者の全体財産を減少させるなど、
全債権者を害するような行為のことをいいます。
偏頗行為の否認について
ある危機的状況が生じた時点からの
偏頗行為について、
否認することができます。
■約定どおりの弁済、担保提供予約にもとづく
担保提供などの場合
この場合は、支払不能になった後や
破産手続開始の申立てがあった後にされた行為が
否認の対象になります。
しかしながら、
債権者が支払不能や支払停止があったことを知らなかったときや、
破産手続開始の申立てがあったことを知らなかったときは
否認することはできません。
■義務がないのに既存債務のために、新たな担保を設定したり、
期限が来ていないのに弁済したりするような場合
このような場合は、さらにさかのぼり、
支払不能になる前30日以内になされた行為が
否認の対象になります。
しかしながら、この場合も、
債権者がその行為の当時、
他の債権者を害する事実を知らなかったと証明できれば
否認することはできません。
※偏頗行為
・債権者間の平等を害する行為で、
特定の債権者だけが弁済を受けたり、
担保の提供を受けたりする行為のことです。
無償行為の否認について
次のような無償行為について否認できます。
■支払いの停止や破産手続開始の申立てがあった後の無償行為
■その前6か月以内にした無償行為
■上記と同視できる有償行為
※無償行為
・ここでは、破産者が行う何の対価も得られない行為、
たとえば贈与や無償での保証債務の負担行為などのことです。
相当対価処分の場合の
否認について
不動産を売却した金銭を債務者が隠してしまうとか、
流用する目的で売却することを知っていた場合に、
否認することができます。